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震災を越え能登の和紙職人さん来訪 北上小学校 ヨシ紙漉き

riasnomori

今年のお正月、まさに元日の夕方。

石川県能登半島での地震は衝撃的でした。最大震度6強の揺れがあって切り替わったテレビの定点ライブカメラを通して、今度は最大震度7の揺れ。まちのあちこちに上がる建物倒壊の砂煙、続いて発令された大津波警報に、中の人はSNSで「逃げて!」「すぐ山へ!」と発信しました(どうしても東日本大震災のあの時が思い出されます)。

中の人は能登にほとんど知り合いを持ちませんが、お一人だけ浮かんだお顔がありました。輪島市仁行(にぎょう)地区で和紙を漉く職人、遠見和之さん。当地の石巻市北上小学校の児童が毎年、自分で刈ったヨシを素材に、自身が受け取る卒業証書用紙を漉く最後のプロセスを指導に、毎冬、来校してくださっています。が、今年1月末に予定されていた紙漉きは、もちろん見通しの立たない延期となっていました。

その遠見さんが、地域の復旧や復興作業に忙しい中、時間をつくって来てくださいました。毎年のように、紙漉きのための道具一式をクルマに積み込んで、10時間ものドライブで(!)。追分温泉で一夜お休みいただき、明くる日、北上小でいつものようにヨシ紙漉きが始まりました。

遠見さんの元へ運ばれたヨシは、きれいなヨシ色の紙料(紙の材料)に変わっていました。ヨシを釜で煮上げ、細かく細かくくだいてペースト状に。粘土よりもっと柔らかい、でも手にはこびりつかない、水にすぐ溶け込む不思議な感触です。これをお風呂のような漉き船の水にたっぷりと溶かして、液体の糊を加えて、さあスタートです。

卒業証書サイズの「漉き桁」を、船の水面に差し込みます。コツは、漉き桁を立ててまっすぐ沈め、水中で水平に直してすくい上げること。と、ウユニ塩湖のような水面が漉き桁の四角い枠に!でもそれもわずかで、下の網から水滴が落ち、繊維が残ります。

これを逆さにして(はがれ落ちません!)、さらし布の上に置き、桁の網だけをはずし上げれば、1枚完成。児童のネームカードを置いて、さらし布を1枚はさみ、次の漉き手の1枚を重ねていきます。

6年生児童12人は2枚ずつ、保護者の方は1枚、漉き上げて作業を終えました。遠見さんはこれを能登の工房へ持ち帰り、翌日には1枚1枚を乾かして、最終的な完成を見ます。北上小学校へ送られてくるその紙に、証書の文面をしたため、名前を入れるその間に、みんなあと10ヵ月、勉強に、スポーツに、頑張らなくちゃね。そして証書を受け取って、中学校へと上がっていきましょう。

「震災で大変な中を、ありがとうございました」と、みんなから感謝のメッセージを聞き、言葉少なで、はにかんだ笑顔が印象的な和紙職人は、ぺこりと頭を下げるのでした。

遠見さんがお住まいの仁行地区は、戸数60戸ほどの山あいの里だそうです。輪島市の市街がある日本海のそばまでは約7kmくらいとのこと。地盤がしっかりしているためか、遠見家も含めて地区の住まいに倒壊などの被害は少なかったそうです。しかし工房で山から引くパイプラインや、紙料を煮る釜の土台など、少なからぬ施設や什器を破損し、早々に復旧しなければならないものでした。

自家はもちろん、地区の復旧にも走り回る中で、紙漉きそのものも大切な仕事です。この4月半ばに、遠見さんは東京銀座のギャラリーで個展を開きました。たまたま上京する予定だった「中の人」は会期中に観ることができました。いま机の前に、買ってきた藍染めの和紙を下げています。美しいです。遠見さん、がんばって、でもあんまりがんばりすぎないでください。応援しています。

 
 
 

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